カーディガンズと共に日本でのスウェディッシュ・ポップの火付け役になったクラウドベリージャム。「大人のパンクキッズ」、ジェニー・メイディン(Vo)が語ってくれた。
後日談:インタビュー後に勧めた渋谷のとあるお店のオープンマイクに彼女が現れ、数曲披露したようでした。偶然にも聴けた方は幸運だったと思います。
●あなたが影響を受けた音楽について教えてください。どういう音楽に触れて育ってきましたか?
ジェニー・メイディン(以下j):ヨルゲン(guitar)やヘンリック(key)と私の趣味はそれぞれちがうけど、似ているところもあるわね。皆、作曲をするけど、ヨルゲンがアレンジをするの。私はパンクを聞いて育ってきたわ。私、大人のパンク・キッズなの(笑)。それとゴスを聞いていたかな。All About Eve, The Missionと Sisters of Mercyみたいな80年代後半のロマンティック・ゴス。メロウで暗い音楽ね。あとCarol King とかJames Taylorみたいなアメリカのシンガー・ソングライターが好きかな。それと古いMotown。私たち3人とも、Motownと70年代の音楽も好きなの。ヨルゲンとヘンリックはEarth Wind and Fireが大好きみたい。特にヘンリックはお洒落なソウルが好きなんだけど、私はあまり好きじゃないの。ヨルゲンはものが良ければどんな音楽も好きなんだと思う。今はヴォサノヴァも聞いているらしいし。私もボサノヴァは結構好きかな。
●自分のシンガーとしての才能を信じ始めたのはいつ頃ですか?
j:「私って(歌が)上手い」って思った事は無いわ。自分の実力に満足しちゃったら、油断してしまって危険だと思うから。私はいつも自分と戦っているの。歌う時にいろんな事をしてみたりね。でも、もちろん歌は「自分に出来る」ということは理解しているけどね。もっと若い時から合唱団やバンドで歌ってきたから。初めてバンドに参加したのは14歳の頃よ。
●いつも英語で歌っていたの?
j:初めてのバンドはパンクだったけど、曲は全部スウェーデン語で歌っていたの。でも学校の合唱団では全部英語だったから、英語に慣れちゃったのよね。スウェーデン人にとっては英語がポップスで使う言葉だし、ビートルズの頃からずっとそうなのよ。それと、日本にJ-POPがあるみたいに、スウェーデンにはスウェディッシュ・ポップがあるし、大人気なの。でも、英語が一番使われるかな。
●あなたが一番尊敬している人は?
j:ドリー・パートン(カントリー・ミュージックの女王)。彼女は私のヒーロー。最高よね。頭が良いし、「バカな金髪女」じゃないし。音楽的にすごく尊敬してる。あとは・・・いいもの創る人なら、たくさんいるわね。例えば、タランティーノの映画は大好き。
●彼の最近の映画も好きですか?
j:ええ、とても好きよ。最初のキル・ビルは最高だった。特にアニメのところがね。あとジム・ジャームッシュが大好きなの。彼の映画は大好き。あと好きな作家もたくさんいる。一番好きなのはVallgren(カール・ヨハン・ヴァルグレン。スウェーデン国内で注目度の高いアウグスト賞の受賞作家)というスウェーデン人。でBulgakov(ミハイル・ブルガーコフ。「巨匠とマルガリータ」の作者)というロシアの作家も最高。ヴァルグレンはスウェーデンではかなり有名なんだけど、日本の人たち好みだと思うから、日本語に訳したらいいわね。読みやすい戯作のような感じで、楽しい書き方なの。
●なるほど。ところで、スウェーデンのミュージックシーンについて教えていただきたいのですが、どういった感じのバンドがいるのですか?
j:スウェーデンのバンドは、クオリティーの高いバンドが多いと思う。私は特に好きじゃないけど。上手いバンドはたくさんいるわ。スウェーデンは人口900万人の小さい国だから、何かが流行ればみんなそれにハマっちゃう。例えば、Hivesの人気に火がついた時は、皆彼らを真似して音楽を作っていたの。で、一年くらいはそれが続くのよ。それから突然、新聞か何かが新しい流行を選んで、その形にハマったバンドが五つか六つぐらい有名になる。例えば、今はエレクトロニカが流行っているから五つか六つのエレクトロニカのバンドが有名になっているわ。
●以前、あなたは学業の為にクラウドベリージャムを去ったのだ、と聞いていましたが、バンドを一度ストップした動機について、もう少し詳しく教えてくれますか?
j:音楽業界への憎しみが一番の理由だったわ。もう飽きれていた。「音楽」というのは私たちが知っている音楽と全然関係ないんだな、と思ったわ。ちゃんと印税をもらうために戦わなくちゃいけなかったし、レコーディングとかライブとかが、そのせいで関係無くなっちゃったの。他の事が優先されていたし。だから「もう嫌だ」と言って、辞めた。それで学校に戻ったの。
●そうですか。何を勉強していたんですか?
j:実はクラウドベリージャムをやっている間も勉強していたの。それで公衆衛生の文学修士号を取得したわ。文学修士は終わったから今は博士号をとっているところ。1月には終わるはずよ。
●まだ音楽業界に対して憎しみを持ってますか?
j:今は、そういう気持ちは持っていないわ。とても楽しいし。あとヨルゲンと二人でレコード会社を起こしたから、音楽業界の一員になっちゃったわね。最初にアルバムがヒットしたとき、私たちは若かったし、自分たちで考えることができなかった。人の言う通りをやるしかなかったの。でも今は言う側になった。今だと「これはやりたくない」と言ったら、やらなくてもいいしね(笑)
●あなた達がブレイクする前と今とで、音楽を作っていて何か大きな違いは感じますか?
j:あまり変わっていないと思う。“Providing the Atmosphere” を聴いて、そのあとの最近の曲を聴いてもサウンドは殆ど一緒。あるミュージシャンのインタビューで「今回のアルバムは、俺たちが作った中でも一番いい」みたいなコメントを読むと、「じゃあそれ以外はそれほどよくないのか〜」とか、私はそう思っちゃうし・・・(笑)。今の私たちの曲は、昔の私たちの曲と同じように「クラウドベリージャムだ」ってすぐにわかると思うわ。前と違うのは、私も作曲するようになったって事。で、私の曲は結構アップテンポでモータウンっぽいのが多いの。ヘンリックの曲だとソウルにどっぷり浸かってるけどね(笑)。今、クラウドベリージャムを聴くと、皆が色んな音楽聞いている、っていうのがわかるはずだけど、最終的にはどれを聴いても「やっぱりこれがクラウドベリージャムだな」と思うの。最近のアルバムは、私たちの「最高の新曲」の組み合わせよ。でも古いアルバムより良いとか悪いとかは言えないわよね(笑)
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